「建設業者」の現状について
※当記事における数値や制度については、公表されているものを参考に細心の注意を払って誤りのないように記載しておりますが、当該数値や制度についての主観的な意見を含むものもありますので、ご理解のほど宜しくお願いします。
尚、明白に誤り等がある場合には、コメントにてご指摘頂けると幸いです。
1・過去10年で最多ペースで倒産する企業が増加
最近、このようなニュースを見かけました。
2024年に発生した「建設業」の倒産件数は、10月までに1600件に迫る数字であり、この数値は8年ぶりの高水準を記録した昨年をさらに上回るペースで急増しています。
通年でみると過去10年で最多を更新する見込みとなっているようです。
2・背景について
主な原因として挙げられるのは、下記のとおりです。
(1)建設コストの上昇
昨今の慢性的な物価高に加えて人件費の高騰が重なり、建設コストが上昇していると言われています。
建設業では労働力の高齢化に加えて、若手労働者不足が問題となっており職人需要の増加から人件費が高騰しています。
またいわゆる2024年問題における働き改革の一環として建設業においても労働時間の規制がなされました。
建設業界の3Kイメージの回復を狙ったものですが、働ける時間が制限されることにより、工期の延長につながり、結果、労務コストの上昇につながっていると言われています。
(2)人手不足
先に述べた建設コストの上昇にも関連してきますが、慢性的な建設現場での「人手不足」が深刻な状況となっています。
ある調査によると人手不足感を抱える建設業の割合は約70%に上り、他の産業と比べても高水準での推移が続いている状況となっています。
より良い人材を確保するためには、賃金を上げたり、待遇を良くしていかなければならず、そういった人件費の向上が大手企業に比べて、賃金引き上げ余力に乏しい中小企業を直撃している現状となっています。
3・労働時間の規制について思うこと
建設業に関わらず、あらゆる業種で労働時間の制限がなされています。
私自身、物流会社で勤務していましたが、2024年問題と言われているように労働時間が厳しく管理されていました。
確かにメリットもありますが、現場レベルではデメリットの方が顕著に表れていました。
例を挙げると一人一人の年間労働時間が定められていたために、担当するエリアによって物量が異なり、労働時間に歪が出てしまうことです。
悪い言葉で言えば、楽なエリアは、稼げて早く帰れてしまい、きついエリアでは、稼げないにもかかわらず帰りが遅くなるといった具合です。
帰りが遅くなるなら、「残業代が出るじゃないか。」と思う方もいるとは思いますが、一人の持ち時間は決められているため、休みを入れられる等で調整されてしまいます。
その分、労働時間に余裕がある人が、代わりに業務を行いますが、代わって業務を行う人はいつも決まってきます。
結局、自社戦力でまかなえない状況になると業務委託契約を結び、他社戦力(軽貨物ドライバー等)に頼り、労働時間の規制が掛からないので夜遅くまで代わりに業務を行ってもらっていました。
これは一つの例にすぎません。
客観的に見れば、労働時間の上限を決めて管理することにより、ホワイトな部分をアピールすることができるので、外面はよく見えるものですが、現場では不満が積もり、出来る人、頑張っている人こそ、疲弊していきます。
建設業、運送業に限らず、労働時間が規制されることにより、あてにしていた残業代に期待できなかったり、工期や納期等が延長したりして、会社としてはコストが増えてしまうことは容易に想像できます。
4・おわりに
まとまりがない記事になってしまいましたが、昨今の国の政策等については疑問が残ります。
2024年問題にしてもそうですが、先日の選挙でも話題になっていた年収103万円の壁の引き上げについて、ある政党が手取りを増やすといった政策を掲げ、議席を大幅に伸ばしたことは記憶に新しいと思います。
そうかと思ったら、先日、厚生労働省が厚生年金加入の為の106万円の年収要件を撤廃し、アルバイト・パートを問わずに週に20時間の時間的要件のみ残す方向等のニュースが流れてきました。
厚生年金保険料については労使折半なので、雇用主側が半分負担します。
私の実家も飲食店を経営しておりますが、このような制度が始まってしまいますと会社の負担が増えてしまい、働く方としても厚生年金保険料の負担が増えてしまうので、何とかして20時間未満に抑えようとするでしょう。
結果、103万円の壁がなくなったとしても106万円の壁の撤廃によって、労働時間を気にしながら働くことになり、手取りは増えないということになります。
こんなことばかりでは、働く事に夢も希望も持てず、人手不足なんか解消できません。
2年前に新築戸建てを購入し、施工中に何度か挨拶した職人さんは、寡黙で一見怖そうな印象でしたが、気になったことを質問した際にも嫌な顔をせずに真摯に答えてくれました。
色々な業種の職人さんが入れ替わりで担当していましたが、人の手で家が建てられていくところを間近でみて、感動したことを鮮明に覚えていますし、自分の家なら尚更です。
手に職をつけて仕事に勤しんでいる方を建設業者に限らず尊敬していますので、微力ながらも行政書士としてサポートしていければと思うところです。