和解書
1・和解契約とは
当事者双方が互いに譲歩して、その間にある紛争を止めることを約束する契約のことをいいます。
タイトルについては、和解書や合意書、示談書などと様々な呼び方がありますが、内容が重要なので気にする必要はありません。
2・どんな内容を記載すればいいの?
契約書全般にも言えることですが、決まった書式などはありません。
和解契約とされるためには、紛争が存在している必要があり、その紛争を双方が互いに譲歩して解決することが必要です。
基本的に、一度は耳にしたことがあるであろう「5W1H」を念頭に記載していけばいいでしょう。
1・いつ(When)
紛争となった事案の日付
2・どこで(Where)
紛争発生の場所(記載しなくても問題はありませんが、当事者について他に紛争事案を多く抱えているようなケースもあり、後々、「どの件だっけ?」と誤魔化されないためにも記載しておくとベストです。)
3・誰が(Who)
当事者双方のことです。書面では、甲、乙と記載することが多いです。
4・何を(What)
例として挙げるなら、当事者乙に対して、暴行を加え、加療約●週間を要する怪我を負わせた。などです。
5・なぜ(Why)
当該紛争に発展する行為を行った理由、いわゆる動機(酔っぱらって、恨みがあってなど)
記載しなくてもいいですが、暴行や窃盗などの刑事事件では、和解契約書を取り交わしていても、捜査機関に被害届や告訴状を提出する人間もいます。
和解契約書などの書面は必ず残しておき、当時の状況を忘れないためにも記載しておくと、後に捜査機関から和解契約書の提示を求められた際にも信憑性が増します。
6・どのように(How)
ここでは、和解方法や和解金の支払い方法について、どのように行うかなどを記載します。
支払い方法については、一括か分割なのか、支払期限は、いつとするのか。
不履行や遅滞した場合には、期限の利益を喪失することや遅延損害金などを記載します。
3・和解に書面は必要?
和解契約書に限らず、売買契約書などの一般的な契約書についても作成が義務付けられているものや作成が契約成立の要件となっているものを除いて、書面は必要ありません。
口頭で契約を締結もでき、軽い口約束だとしても契約とみなされることもあります。
それでは、なぜ、ビジネス上や日常生活上、契約書は多く作成されているのか。
書面を作成する最大のメリットは、証拠保全になることです。
原則、和解契約書を締結した後に訴訟や捜査機関への届出を行うことは許されませんが、特に和解契約においては、元々双方に紛争があったことから締結するものであり、和解という特性上、全ての当事者が円満に解決するとは限りません、
和解契約書を締結した後に、その事実を知らない捜査機関に対し届出を行った場合、原則、受理しなければなりません。
そういった時に、和解の事実があれば、その事情を考慮した上で捜査が行われ、不起訴となると考えられます。
その事実を証明するためにも、和解契約書などとした書面を残す必要があるのです。
4・まとめ
私が警視庁で刑事として宿直勤務に従事していた際に、何度も酔っ払い同士の喧嘩事案を扱ったことがあり、警察署に同行し、被害届提出の意思がなければ、和解書を作成し、双方に署名を頂いていましたが、その中でも数件の当事者が後日、「当時は酔っぱらっていたので、気が変わったので、相手の処罰を望みます。」と言って来署されたことがありました。
そんな時に和解書作成の事実を伝えた上で、「今後、捜査を行ったとしても和解の事実がある以上、不起訴となる可能性が高く、喧嘩の場合、双方に過失がることが多いので、お互いに罰則を受ける可能性があります。」と説明することができます。
後の蒸し返しを防止する観点から書面を残しておくことは、重要です。
ネット上で検索すれば、たくさんの和解書の見本やテンプレートが出てきますが、全く同じ内容となる紛争はありません。
本来、記載すべき内容が記載されていない、内容が曖昧である、譲歩していない
などの不備が発生しないためにも書類の作成は専門家である行政書士に頼みましょう。