告訴状と被害届

1・違いについて

【被害届】という言葉は、大半の方が聞いたことがあると思いますが、【告訴状】と言われるとあまり馴染みがないと思います。

その違いについて、簡単に説明すると

犯罪の被害に遭ったと捜査機関に届出るのが被害届

告訴権者(被害者等)が、捜査機関に対して犯罪発生事実を申告したうえで犯人の処罰を求める意思表示を書面にしたものを告訴状

といいます。

どこが違うの?と疑問に思う方もいるかもしれませんが、簡単に説明すると、明確な処罰意思があるかどうかの違いです。

2・効果について

どちらの書類も捜査機関に受理されると、捜査は開始されます。

例えば、時間が経つにつれて、データが消えていってしまうような犯罪発生現場付近の防犯カメラ映像等のデータ抽出は、近日中に実施します。

2つの書類の効果という意味で、大きく違う点は、【告訴状】の提出を受けた捜査機関には、書類を検察官に送付等の義務が生じる点です。

【被害届】にあっては、そのような義務はありません。

3・結局、どちらを提出すればいいの?

例えば、自転車や財布が盗まれてしまったが、犯人は分からない、保険を利用するのに届出たことを証明する受理番号が必要だ。等の場合は、被害届で十分だといえます。

それに比べて、会社の金を横領されてしまった、誰々に殴られて骨折した、犯人は分かっているので処罰して欲しい。等の場合は、告訴状の方が望ましいでしょう。

4・まとめ

私自身、警視庁刑事として多くの被害届を受理してきましたが、被害届でも十分に捜査は行います。

被害届に基づいて捜査を進めていき、被疑者を特定できれば、取調べを実施や場合によっては身柄の拘束を行い、検察官に送致(付)してきました。

告訴状というと検察官に送致(付)する義務が生じるため、告訴状の内容についても要件を具備していなければなりません。

ここでいう内容というのは、表面上のものではなく、告訴状に記載された犯罪事実について、真実性、具体性等の犯人が犯人であると疑うに足りる相当な理由があること、被疑者不詳でも告訴はできますが、その場合には、可能な限り、犯人の特徴を記載することや処罰意思が固い事が望ましいです。

告訴状の内容が矛盾していたり、告訴権者の言っていることが曖昧だったり、具体性に欠けたり、民事上の債権回収を有利に進めるために告訴をしたりするケースもありますので、捜査機関は告訴状の受理には慎重となります。

その点で告訴状の受理は、ハードルが高いと言われているのではないかと考えられます。

しかしながら、捜査機関側も適切に作成された被害届や告訴状の受理を安易に拒否することは許されませんので、万が一、受理を拒否された際には、「あと何が必要ですか?どこに不備がありますか?」等と質問することが大切です。

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