告訴事実を徹底解説~器物損壊等罪編
1・器物損壊等罪とは?

(1)器物損壊等罪
他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
とされています。
誰でも分かりやすく説明すると他人の物を壊す。といった行為です。
過去の判例では、
「種類、性質の如何を問わず、また経済上の交換価値があるか否かを論ぜず、汎く財産権の目的となり得る一切の物件をいい、法名を記した紙片も含有される。」
との判例がでております。
一例ではありますが、コンピューターウイルスをインターネット上に流し、感染者のパソコンの作動を害した行為も器物損壊罪に該当するとの判例が出ていることから、個々の事案ごとに器物損壊罪の客体にあたるかを判断していく必要があります。
(2)故意犯であることが必要(わざと)
器物損壊罪が成立するには、物を壊した行為について、「故意=わざと」であることが必要です。
誤って(過失)で物を壊してしまった場合には、器物損壊罪は成立しません。
故意か過失かの部分で警察は告訴状の受理を拒もうとしてくる可能性があります。
例を挙げますと
➀成立する例(故意あり)
- 相手に腹を立てて、車を蹴ってへこませた
- 壁に落書きをして、汚損させた
- 他人のスマホを床に叩きつけて壊した
②成立しない例(故意なし)
- 手が滑って花瓶を落とした
- 風でドアが閉まり、偶然にガラスが割れた
- 転倒して他人の自転車にぶつかり壊してしまった
これらは「過失」なので刑法上の器物損壊罪にはなりませんが、民事上の損害賠償責任は発生します。
2・告訴事実の解説
器物損壊等罪
被告訴人は、令和7年10月24日午後0時30頃(※1)、東京都東村山市秋津町●丁目●番●号喫茶店「A」(※2)店内において、同店経営者Bから「酔い過ぎて他の客に迷惑だから帰ってくれませんか。」(※3)と言われて腹を立て、皿、コップなどが置かれたテーブルを引っくり返して(※4)B所有の皿、コップなど●点(時価合計約●●円相当)(※5)を破壊し、もって他人の器物を損壊したものである。
※1→告訴状や被害届もそうですが、犯罪日時については被害に遭った時に誤差のない時計を見ていた等の特殊な事情でない限り、頃をつけるのが一般的です。
※2→警察署への告訴状や被害届に記載する住所については住居表示どおりに記載します。秋津町●ー●ー●等と略してはいけません。番地なのか番なのか等、正式な住居表示については自治体に確認すると教えてくれます。
また犯行場所が学校や施設などの建物内である場合には、その施設の正式名称を記載します。
※3→犯行に及んだきっかけ(動機)について、ある場合は記載します。正確な言動を記憶していない場合には、「~~」などと言われたことに腹を立てというようになどをつけるといいでしょう。
※4→本件のようにどのような行為で壊されたかが判明している場合には、その行為を記載します。
※5→器物損壊罪の客体となる物について、詳細に記載します。しかし、壊された物が多数に及ぶ場合には、コップなど●点というように記載します。
時価合計については、分かる範囲で記載します。購入価格から考えて大体の金額で大丈夫です。
自動車や腕時計等については、インターネットで調べると現時点での相場が分かることが多いので、そういった物については調べてから記載します。
※住所・氏名・施設名等については、全て仮名、仮称とする。
3・まとめ
告訴状で最も重要なポイントである「告訴事実」ですが、記載する上では他の犯罪と明確に区別できるようにすることが大事です。
器物損壊等罪について注意すべき事項については
(1)器物損壊罪は親告罪=告訴期間内に告訴することが必要です
の記事で解説しておりますので、是非、ご覧ください。
「犯人を知った日から6カ月以内に告訴しなければならない。」
とされているので、この期間を過ぎてしまうと告訴が受理されませんので注意しましょう。
ここでいう「犯人を知った日」とは、犯人の住居や氏名などの詳しい情報はなくとも「誰なのか」を特定できる程度の情報を得た日、ということです。
たとえば、ネット上の誹謗中傷が名誉毀損罪や侮辱罪にあたるケースでは、開示請求等の手続きを得ないと加害者の住居や氏名といった情報はわかりませんが、投稿者としてアカウント名やハンドルネームなどは特定できるので、被害者が誹謗中傷の投稿が存在することを知った時点が「犯人を知った日」になります。
(2)故意犯である必要があります(以下はAIによる故意の3つのタイプを説明したもの)
故意とは、自分の行為が犯罪の結果を生じさせると知りながら、あえてそれを行う意思のことです。
つまり、「やれば相手の物が壊れる(人が死ぬ・傷つく)と分かっていながらやる」という心の状態を指します。
| 種類 | 意味 | 例 |
|---|
| ① 直接故意 | 結果をはっきりと望んでいる | 「腹いせに相手の車を蹴って壊した」 |
| ② 間接故意 | 結果は望んでいないが、起こると分かってやった | 「壊れるかもしれないと思いながら、強く蹴った」 |
| ③ 未必の故意 | 結果が起きるかもと認識しつつ『それでも構わない』と思って行った | 「壊れてもいいや」と思って行為した |
■ 例文
Q AさんがBさんの車に腹を立てて、怒りにまかせて蹴った。その結果、ドアがへこんだ。
A この場合、Aさんは「壊れるとわかって蹴っている」ため、→ 故意がある → 器物損壊罪成立。
となります。
最後に、日常生活を送る上で被害に遭う犯罪としては、窃盗・詐欺・暴行・器物損壊等が比較的誰でも被害に遭う可能性が高い犯罪と思います。
私自身も数ヶ月前に購入したばかりの自転車を盗まれて被害届を提出しました。
この自転車が高級なスポーツタイプの自転車であれば、私は告訴状を提出していたことと思います。
被害届では、満足な捜査をしてくれない事を知っているからです。
些細なことでも構いません。
これって告訴できそう?これって刑事事件になる?告訴状作ってみたけど大丈夫か確認して欲しい。
等のお悩みに親切、丁寧にお答え致します。

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