観念的競合と牽連犯の違いをわかりやすく解説

刑法には、一つの行為が複数の犯罪に関係する場合の処理方法として、「観念的競合」「牽連犯」という重要な概念があります。

どちらも複数の罪が成立し得るが、処罰は原則1つにまとめられる点が共通していますが、成立要件や考え方は異なります。

この記事では、両者の違い・要件・具体例を整理して解説します。

1・観念的競合とは

1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合をいい、刑法54条1項前段が根拠です。

ポイント

  • 行為は物理的に1つ
  • しかし法律上は複数の犯罪が成立
  • 最も重い刑のみで処断

具体例

  • 1発の銃弾で2人を死亡させた → 殺人罪が2個成立
  • 警察官を殴った→公務執行妨害罪と暴行罪が成立

このように行為が一回でも犯罪評価は複数になるのが特徴です。

2・牽連犯とは

複数の行為が、手段と目的など密接な関係にある場合をいい、刑法54条1項後段が根拠です。

成立要件

単に複数犯罪があれば足りず、次の関係が必要です。

  • 手段と目的の関係
  • 原因と結果の関係
  • 通常一連と評価される関係

つまり、「犯罪Aをするために犯罪Bをした」という構造が必要です。

具体例

  • 住居侵入して窃盗 → 侵入罪+窃盗罪

この場合も最も重い罪で処断されます。

3・観念的競合と牽連犯の違い(比較表)

項目観念的競合牽連犯
行為数1個複数
関係同一行為が複数罪に該当手段・目的などの関係
典型例1発の銃弾で複数人死亡侵入して窃盗
処罰最も重い刑最も重い刑

判断基準のコツ

  • 行為が1回か → 観念的競合
  • 行為が複数か → 牽連犯検討

4・なぜ一罪として扱うのか(制度趣旨)

両制度の目的は共通しています。

✔ 刑罰の過度な重複を防ぐ

✔ 行為全体を一体として評価する

もし全部を別罪で足し算すると

→ 刑が極端に重くなる

→ 刑罰バランスが崩れる

そのため法律は、「一体評価して一罪として処理する」仕組みを採用しています。

5・実務での見分け方

実務判断では次の順で考えると整理しやすいです。

① 行為は物理的に何個か

② 罪同士に手段目的関係があるか

③ 同一行為評価が可能か

といった形です。

現役の警察官でも、観念的競合と牽連犯の違いについて、即答できる人は少ないと思います

6・まとめ

凄く簡潔にまとめていくと、下記のように

  • 観念的競合=1行為で複数罪成立
  • 牽連犯=複数行為だが密接関係あり
  • どちらも最も重い刑で処断

ということになります。

現役の刑事などの捜査権を持つ機関であれば、観念的競合・牽連犯などについて知識が必要にはなってきますが、一般の方が犯罪の被害に遭った場合には、特に気にする必要はありません。

被害に遭った旨を警察に説明し、その犯罪が

  • 何罪に該当するのか
  • 観念的競合なのか
  • 牽連犯なのか

などを調べるのは警察です。

犯罪の被害に遭った時、まずは警察に相談しましょう。

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