警察は告訴を受理しない自由を持っていない

1・ 判例から読み解く「告訴受理義務」の実際

「警察に告訴状を持って行ったが、受理してもらえなかった」このような相談は、実務の現場では決して珍しくありません。

では、警察は本当に自由に告訴を拒否できるのでしょうか。

結論から言えば、判例上、そのような広い裁量は認められていません。

本記事では、実際の裁判例をもとに、告訴受理の法的原則と、警察対応の問題点を整理します。

2・告訴に「詳細な事実」はどこまで必要か

警察が告訴を拒む理由として、よく聞かれるのが次の主張です。

「犯罪の日時・場所・態様が特定されていない」

しかし、この点については最高裁判例が明確な基準を示しています。

最高裁判例

「告訴における犯罪事実は、概括的に特定しうる程度であれば足り、犯罪の日時、場所、態様等の詳細を必ずしも明らかにする必要はない」

つまり、捜査によって明らかにされるべき事項まで、告訴人に完璧な特定を求めるのは誤りなのです。

「犯罪が成立しないから受理しない」は許されるのか

次に問題となるのが、警察による次の判断です。

「これは犯罪にならないから受理できない」

しかし、この判断も原則として警察の段階で行うべきものではありません。

※ただし、明らかに犯罪にならないとされるものは受理されないのは当然といえます。

地裁の判決

「適式の告訴があった場合には、検察官又は司法警察員は原則としてこれを受理しなければならない」

高裁の判決

「告訴を受けた司法警察員は、原則としてこれを受理する義務がある」

と、受理義務を明確に認めています。

告訴提出→形式要件を満たす→【原則】受理義務あり→捜査・送致

※明らかに犯罪に該当しないものを除き、「犯罪不成立の判断」は、捜査・検察段階で行うものです。

「ネット犯罪だから難しい」という理屈の危険性

もし、「インターネット上の犯罪は特定が難しいから受理しない」という主張がまかり通るなら、どうなるでしょうか。

【極端な帰結】

ネット犯罪→特定困難→告訴不受理→ネット犯罪は事実上“野放し”

となり、これは、法秩序そのものを否定する結果になりかねません。

確かにネット上の犯罪は犯人の特定が困難ではあり、告訴人側で開示請求等を通じて特定した上で告訴がされることが大半といえます。

実務上、何が重要か

現場で重要なのは、次の点です。

  • 告訴状が形式要件を満たしているか
  • 犯罪事実が概括的に特定されているか
  • 判例に照らして、不受理理由が妥当か

「警察が言ったから仕方ない」ではなく、法的根拠に基づいて冷静に判断することが不可欠です。

まとめ

✔ 告訴には「完璧な証明」は不要

※そもそも捜査権もない一般人市民に完璧な証明は不可能です。

✔ 概括的な犯罪事実の特定で足りる

※実務上は、ある程度特定した上で告訴する必要があります。あまりにも抽象的だと本当に犯罪があったのか信頼性が問われてきます。

✔ 適式な告訴は、原則として受理義務がある

✔ 警察の不受理判断が、常に正しいとは限らない

告訴は、国民に保障された重要な権利です。

正しい知識を持つことで、不要な泣き寝入りを防ぐことができます。

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