告訴事実を徹底解説~傷害罪編

1・傷害罪とは?

(1)傷害罪(刑法204条)

人の身体を傷害した者は、15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。

と規定されています。

分かりやすく言えば、
「暴行によって人の身体に何らかの障害(けが)を生じさせたとき」に成立する犯罪です。

暴行罪との違いは、ケガの有無です。


(2)「傷害」の範囲は広い

判例では、傷害とは、
「人の生理的機能に障害を与えること」
とされています。

そのため、以下のようなケースでも傷害罪に該当する可能性があります。

  • 殴られて青あざが残った
  • 首を締められて喉に痛みが続いた
  • 髪を強く引っ張られ、頭皮に痛みが残った
  • 平手打ちで耳鳴りが続いた
  • 強い押圧で筋肉痛や打撲が数日残った
  • 精神的ストレスによる不眠  ※これ単独では難しいですが、暴行が前提なら傷害に含まれるケースもあります。また隣人からの継続的な嫌がらせにより、精神疾患を発症した場合に傷害罪として告訴が受理された事例を把握しております。

要するに、
外見上のケガがなくても、身体機能に支障があれば傷害罪になり得ます。


2・傷害罪が成立するための要件

(1)故意が必要(わざとやったこと)

傷害罪は、原則として故意犯です。

つまり、
「相手に向けて暴行を加えた」
 その結果としてケガを負わせたことが必要
です。

加害者が「ケガをさせるつもりまではなかった」と言っても、殴る・蹴るなどの暴行を故意にやっていれば、傷害罪の成立が認められます。


(2)「負傷」が法律上どこまで含まれるか

傷害罪でよくある疑問が、

どこまでが「傷害」になるのか?

です。

■成立する例

  • 頬の打撲、青あざ
  • 首・肩・腕などの痛みが数日続いた
  • 掌で叩かれ耳が聞こえづらくなった
  • 軽度の捻挫
  • 内出血
  • 頭痛やめまいが継続

■成立しない例

  • 当日中に痛みが消えた軽度の違和感
  • 医療機関の診断で「異常なし」とされた場合(ただし、違和感が継続するような場合は再診が必要です)

3・告訴事実の解説※住所・氏名・施設名はすべて仮名・仮称とする。

傷害罪

被告訴人は、令和7年11月1日午後7時0分頃(※1)、東京都清瀬市竹丘●丁目●番●号先路上(※2)において、告訴人に対し「前から見るたびに虫唾が走るんだよ。」(※3)などと言いながら、左手拳で同人の右頬を数回殴打する暴行を加え(※4)、よって同人に対し、全治7日間を要する右頬打撲傷(※5)の傷害を負わせたものである。

※1→特殊事情がない限り「頃」を付けます。
時間を特定すると警察が防犯カメラ映像を収集しやすくなります。

※2→住所は住居表示どおりに記載します。略記不可です。

※3→動機となる会話内容は、正確に覚えていなければ、「〇〇~」などと言いながら~という具合になどの記載で構いません。

※4→傷害罪では、「どの暴行により、どんな傷害を負ったか」を具体的に書くことが重要です。

例:顔面を殴打した、胸部を強く押した、背後から突き飛ばしたなど、そして右手なのか左手なのか、手拳なのか平手なのかなど

※5→傷害罪においては、医師の診断書を基に「左頬部打撲・頚部痛」などと具体的に書きます。


4・傷害罪の告訴で注意すべき点

(1)傷害罪は「非親告罪」

傷害罪も暴行罪と同じく、親告罪ではありません

告訴期間(知った日から6か月以内)といった制限もありません。

しかし実務では、被害から時間が経つほど警察が動きづらくなる(証拠がほとんど残っていないため)のが現実です。

そのため、傷害罪として事件化を望むなら
被害直後に110番通報 → 医療機関受診→診断書作成
という流れが最適です。


(2)医療機関の受診が極めて重要

傷害罪で最も重要な証拠は、診断書 です。

次のような資料があるほど告訴状の説得力が上がります。

(3)傷害罪で重要な証拠

  • 医療機関の診断書
  • 負傷部位の写真(赤み・腫れ・あざ)
  • 防犯カメラ映像
  • 目撃証言
  • 110番通報記録
  • 被害後すぐに書いた状況メモ

診断書がないと、「本当にケガを負ったのか」という点で警察の判断が慎重になり、告訴が受理されないケースもあります。

また被害に遭った日から期間が空いた後に医療機関を受診した場合には、その怪我と暴行との因果関係があるのかないのかという点で警察が告訴の受理を渋ることと思います。


5・まとめ

傷害罪の告訴状を作成するうえで重要なポイントは次の3点です。

  1. どのような暴行行為が行われたか(具体的に)
  2. その結果、どのような傷害が生じたか(診断書内容を記載)
  3. 被害発生直後に収集した証拠の有無(写真・診断書・通報記録など)

傷害罪は、暴行罪より重い刑罰が科される犯罪です。
しかし、「ケガの証明」が欠けていると警察が慎重になるため、診断書や写真の確保が極めて重要となります。


※本記事は傷害罪および告訴状作成に関する一般的な情報提供を目的とするものです。
個別の事件についての法律判断や助言は行政書士業務の範囲外となります。

告訴状の事実整理や文書作成については行政書士として対応可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

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