告訴事実を徹底解説~暴行罪編

1・暴行罪とは?

(1)暴行罪(刑法208条)


暴行を加えた者は、2年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

と規定されています。

分かりやすく説明すると、
「人の身体に向けて有形力(力)を行使すること」
が暴行行為にあたります。


(2)暴行の範囲はとても広い

暴行というと「殴る・蹴る」をイメージしがちですが、判例では、

「人の身体に対して直接・間接に不法な有形力を行使するすべての行為」

が暴行とされています。

そのため、以下のような行為も暴行罪に該当する可能性があります。

  • 顔の目の前で大声で怒鳴る
  • 物を投げつけて(当たらなくても)威嚇する
  • 相手に向かってタバコの煙を吹きかける
  • 相手に向かって唾を吐きかける

などです。

また、暴行によりケガをさせた場合には、暴行罪より重い傷害罪(刑法204条)が成立します。


2・暴行罪が成立するための要件

(1)故意が必要(わざとやったこと)

暴行罪は故意犯です。

つまり、
「相手に向かって力を加えるつもりでやった」
という意思が必要です。

不注意で相手にぶつかったような過失の場合は、暴行罪は成立しません
(ただし、民事上の損害賠償は発生する可能性があります)。


(2)けがをしていなくても暴行罪は成立する

ケガがなくても、力を加えた事実があれば暴行罪になります。

■成立する例

  • 胸ぐらを掴んだ
  • 肩を強く押した
  • 顔の近くで物を投げて威嚇した
  • 足元に向けて蹴りを入れた(当たらなくても)

■成立しない例

  • 混雑で偶然ぶつかった
  • バランスを崩して相手に触れてしまった
    (いずれも過失)

3・告訴事実の解説※住所・氏名・施設名等は仮名・仮称とする。

暴行罪

被告訴人は、令和7年12月1日午後3時30分頃(※1)、東京都東久留米市幸町●丁目●番●号先路上(※2)において、A(当時35歳)から立小便をしたことを注意(※3)されて立腹し、同人に対し、両手で同人着用のジャンパーの襟首を掴んで強くしめあげる(※4)などの暴行を加えたものである。

※1→被害に遭った瞬間に正確な時計を見ていた等の特殊事情がない限り、「頃」を付けて記載します。また暴行罪等の犯罪については、犯行状況を映した防犯カメラ画像があれば強力な証拠となります。時間をある程度特定することで警察が防犯カメラデータ取集に要する手間が必然と減ることと思います。

※2→警察署への告訴状や被害届に記載する住所については住居表示どおりに記載します。幸町●ー●ー●等と略してはいけません。番地なのか番なのか等、正式な住居表示については自治体に確認すると教えてくれます。

また犯行場所が学校や施設などの建物内である場合には、その施設の正式名称を記載します。

※3→犯行のきっかけがある場合には記載しますが、正確な言い回しを覚えていないときは、「〇〇」などと言われたことに腹を立て、といった表現で問題ありません。

※4→暴行の方法は具体的に書きましょう。暴行罪は「どういう力を加えたのか」が重要なポイントです。

例:右手で胸ぐらを掴んだ、肩を強く押した、顔の近くに向けて缶コーヒーを投げつけた、足に向かって蹴りを入れた 

などです。


4・暴行罪の告訴で注意すべき点

(1)暴行罪は「非親告罪」

暴行罪は親告罪ではありませんので、告訴期間(犯人を知った日から6カ月以内)という制限はありません。ただし、暴行罪のような犯罪については、被害に遭った日から期間が空いてしまうと警察が取り合ってくれない事案も多いため、可能な限り、被害に遭ったその場で110番通報し、警察官に対応してもらうことが重要です。

(2)直後の証拠確保が重要

暴行はケガが残らないケースが多いため、次の証拠が重要です。

  • 防犯カメラ映像
  • 店内の目撃者の証言
  • 被害後すぐに書いたメモ
  • 警察への110番通報履歴
  • 体に残った赤み・痛みの写真
  • 着衣の乱れ・破れの写真

などが考えられます。

特に被害当日から期間が空いてしまうと防犯カメラデータも上書きされてしまって、被害者の供述のみしか証拠がないといった状況になりかねません。

供述のみでの告訴も可能とはされていますが、一般的には、他の客観的資料がない状況だと告訴が受理される可能性は低いと思われます。

分かりやすく言えば、「言った、言わない」などと同じ状況であるからです。


5・まとめ

暴行罪の告訴状を作成する際に重要なポイントは以下の3点です。

  1. どのような暴行行為が行われたか(具体的に)
  2. その時の状況(動機・経緯)
  3. 被害者に加えられた力の内容(押した・殴った・投げた等)

暴行はケガがなくても成立する犯罪です。
しかし、軽微な事案や客観的証拠が一切ない状況では警察が消極的な対応をすることも多いのが実情です。

※本記事は暴行罪および告訴状作成に関する一般的な情報提供を目的とするものです。
個別具体的な事案についての法律判断や事件処理の助言は、行政書士業務の範囲外となるため行っておりません。

告訴状の作成に必要な事実整理や書類作成に関するご相談については、行政書士として対応可能ですので、お気軽にお問い合わせください。


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