【軽貨物の安全対策が強化】安全管理者選任や講習が義務化!

1・貨物軽自動車運送事業(黒ナンバー)における安全対策強化の背景

私自身、警視庁退職後に某大手宅配業者において、約6年間トラックドライバーとして勤務してきました。

特にコロナ禍においては、通常120個前後で落ち着いていた配達個数が倍の200個を毎日超える数の配達を数か月間行っていました。

さらにいえば、アフターコロナにおいてもネット通販の勢いは止まりません。

その裏側には商品を自宅へ届ける軽貨物配送の存在が不可欠であり、私自身も何度も委託業者に救われた経験があります。

軽車両によって荷物を配送する軽貨物事業には、宅配需要の増加に併せて参入する法人・個人が増加しています。

その軽貨物業界全体で取り組むべき事項として挙げられるのが、自動車事故防止に向けた安全対策です。

(1)配送需要増による労働環境の変化

通販用者数が拡大の一途を辿る中、消費者に荷物を届ける最後の区間であるラストワンマイル領域において、大手宅配業者従業員には厳しい労働時間規制が課されていることから軽貨物自動車の配送需要が増加しています。

これにより、多くの事業者が新規参入していますが、依然として莫大な配送需要に追いつかない状況が続いています。

特に運送業では、人材不足が顕著であることから、軽貨物事業者は過酷な環境での稼働を余儀なくされています。

(2)軽貨物の事故が多い要因

多忙かつ急がないとその日の配達を終えることができない焦りがあると考えられます。

特に宅配に関しては荷物が多く、時間内に急いで配送しなければならない状況に加え、時間指定もあることで焦りが焦りを助長し、安全確認の不足が常態化してしまいがちです。

そうなれば、日々の稼働における事故の確率は上がってしまいます。

また、新規参入の多い軽貨物業界には経験の浅いドライバーが多く存在します。

交通量の多い道路や道幅の狭い住宅街を、慣れない軽貨物車を運転しながら配送をこなしていくのは想像以上に難易度が高いと思われます。 
以上の背景を踏まえ、政府は事故件数の減少を目的に安全対策への理解や安全意識の向上などの安全対策強化に関する事項を新たに追加しました。

2・令和7年4月から施行される新制度の概要

安全対策強化に伴い、貨物軽自動車運送事業者にいくつかの事項が義務化されます。

ここで注意が必要なのが1人で事業を行う場合でも自ら安全対策を実施する必要があります。

新制度で新たに追加される安全対策項目は下記の6点です。

(1)貨物軽自動車安全管理者の選任・届出

貨物軽自動車運送事業者は、貨物軽自動車安全管理者を営業所ごとに選任しなければならないという事項です。

貨物軽自動車安全管理者とは、運行の安全確保のために必要な事項に関する知識を身につけ、安全確保に関する業務を管理する者を指します。

選任人数は各営業所に一人、個人事業主の場合は自身を選任し届出する必要があります。

選任のタイミングは、令和7年4月以降に運送事業の経営届出を行う場合は届け出後速やかに令和7年3月末までに経営届出を行った事業者は令和9年3月までに選任しなくてはいけません。(※猶予期間)

また誰でも貨物軽自動車安全管理者になれるというわけではなく、下記の要件があります。

  • 貨物軽自動車安全管理者講習を選任の日から遡り2年以内に修了した者
  • 貨物軽自動車安全管理者講習を修了し、貨物軽自動車安全管理定期講習を選任の日から遡り2年以内に修了した者
  • 貨物自動車運送事業者が一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業を経営している場合に、運行管理者として選任されている者

が要件とされており、運輸支局を通じて国土交通大臣に届出をしなければいけません。

届出の様式については、

を確認して下さい。

(2)貨物軽自動車安全管理者の講習受講

貨物軽自動車安全管理者講習とは、「貨物軽自動車安全管理者」の選任にあたって受講しなくてはならない講習のことです。

講習には2種類ありますので、下記に記載していきます。

(1)貨物軽自動車安全管理者講習

所要時間は5時間以上であり、その内容は安全確保に関する業務を行うに当たり必要な事項に関する知識を習得するためのもので、貨物軽自動車安全管理者の選任にあたり受講する必要があります。

(2)貨物軽自動車安全管理者定期講習

所要時間は2時間以上であり、安全確保に関する業務を行うに当たり必要な事項に関する最新の知識を習得するためのもので、選任後2年ごとに受講が必要です。

選任された本人以外の代理受講は認められていません。

受講場所や受講費用は国土交通省が登録した講習機関によって異なり、eラーニング方式(PCやスマホを使用するオンライン受講)の実施も認められています。

講習機関も下記ボタンから確認できます。

(3)・初任運転者等への指導及び適性診断の受診

交通事故の未然防止を図るため、貨物軽自動車運送事業者は初任運転者等の特定の運転者に対しては、特別な指導を実施するとともに、外部の研修機関や専門機関が行う適性診断を受診させなければなりません。

私自身も適正診断を何度も受けてきましたが、自身の運転の癖を教えてくれたりと割と役に立ったという印象です。

また、運転者に対する指導や適性診断の受診状況等を記載した「貨物軽自動車運転者等台帳」を作成し、営業所に備え置かなければなりません。

特定の運転者とは、「初任運転者」「高齢者」「事故惹起者」を指します。 

また、対象者ごとに指導の内容が異なりますので、特別な指導・適性診断についてより詳しく知りたい方は「国土交通省ホームページ」からご確認ください。

(4)・業務の記録

言葉の通り、運行業務について記録を義務付ける事項です。

具体的には、下記の項目について記録を作成し、1年間保存しなくてはならないというものです。記録の保存方法は電磁的方法でも構いませんので、業務が終了するタイミングで随時記入をおすすめいたします。

(1)全ての運行で記録が必要な項目

  • 運転者の氏名
  • 運転者が従事した運行の業務に係る事業用自動車の車両番号(ナンバープレート等)
  • 業務の開始及び終了の地点、日時、主な経過地点、業務に従事した距離
  • 業務を交替した場合、その地点及び日時
  • 休憩または睡眠をした場合、その地点及び日時

(2)集貨地点等(荷主都合により集貨又は配達を行った地点)で30分以上待機した場合

  • 集貨地点等
  • 集貨地点等への到着日時(荷主から指定された場合)
  • 集貨地点等に到着した日時
  • 集貨地点等における荷役作業(積込みまたは取卸し)の開始・終了日時
  • 集貨地点等で附帯業務(貨物の荷造り・仕分けその他の貨物自動車運送事業に附帯する業務)を行った場合はその開始・終了日時
  • 集貨地点等からの出発日時

(3)荷役作業等(荷役作業又は附帯業務)を実施した場合(契約書に明記されている場合は、1時間以上である場合)

  • 集貨地点等
  • 荷役作業等の開始・終了日時、荷役作業等の内容
  • 集貨地点等・日時・内容について荷主の確認を得られたか否か

(4)人身事故、物損事故、国土交通大臣への提出が必要な事故または著しい運行の遅延その他の異常な状態が発生した場合

  • その概要及び要因

(5)・事故の記録

言葉の通り、事故を記録する事項です。事故が発生した場合に、その概要や原因などを記録し、3年間保存しなくてはいけないというものです。

記録しなくてはならない項目は以下の通りです。

  • 運転者の氏名
  • 事業用自動車の車両番号
  • 事故の発生日時
  • 事故の発生場所
  • 事故の当事者氏名
  • 事故の概要
  • 事故の原因
  • 再発防止策

(6)・国土交通大臣への事故報告

事故が発生した際に、所定の報告様式に基づき国土交通大臣に報告するという事項です。

他方で、重大な事故については、24時間以内にできるだけ速やかに、電話等で管轄する運輸支局等に速報しなければいけません。

報告する項目は以下の通りです。

  • 自動車の使用者の氏名又は名称
  • 事故の発生日時
  • 事故の発生場所
  • 当時の状況
  • 当時の処置
  • 事故の原因
  • 再発防止対策

3・継続して実施が必要な安全対策

上記に記載したとおり、新しく追加された安全対策事項に加え、これまでに続いて実施が必要な事項は以下になります。

1・健康状態の把握

運転者に対し、雇用時や健康診断を受診させ、受診結果を事業者に提出させなければいけません。

2・運転者に対する指導及び監督

運転者に対し、運転技術や法令遵守事項の指導・監督を毎年実施しなければいけません。尚、実施内容は記録した上で、3年間保存する必要があります。

3・点呼

運転者に対し、乗務前後に必要事項(酒気帯びの有無、疾病・疲労・睡眠不足その他の理由により安全運転をすることができないおそれの有無、車両の日常点検等)を確認し、安全確保のための指示をしなければいけません。尚、何かしらの問題が確認された場合は運行してはいけません。

4・運転者の勤務時間の遵守

勤務事案は法令に定められた時間の範囲内に収めなければいけません。

5・異常気象時における措置

台風や積雪などの環境変化に応じて、輸送の安全確保を行う措置を講じなければいけません。

6・過積載の防止

過積載での運行を前提とする運行計画の作成や運送の引き受け、指示をしてはいけません。

7・貨物の適正な積載

貨物重量が前後左右で偏らないように積載、また貨物が落下しないように措置をしなくてはいけません。

4・安全規制に伴う罰則について

設置が義務付けられている「貨物軽自動車安全管理者」ですが、以下に該当すると罰則が課せられます。

  • 重大な事故を引き起こしたときに、報告せず、又は虚偽の報告をした場合:50 万円以下の過料
  • 貨物軽自動車安全管理者を選任する規定に違反した場合:100万円以下の罰金 。
  • 貨物軽自動車安全管理者の選任若しくは解任に係る届出をせず、又は虚偽の届出をし た場合:100万円以下の罰金

5・まとめ

令和7年4月施行の新制度は軽貨物車両の事故増加を受け、安全意識の向上を目的に施行されます。

軽貨物自動車で運送業を行っている方の大半が個人事業主であると考えられます。

会社や組織に縛られずに、自由を求めて個人事業主という道を選んだにも関わらず、昨今の社会情勢の変化から今後もますます運送業を取り巻く環境は厳しく規制されていくと考えられます。

私自身、間近で軽貨物車両で稼働する個人事業主と密接に関わってきた経験があり、お互いに協力しあって担当コースの荷物を配達してきましたが、労働時間規制が厳しい社員に代わって、業務委託業者である軽貨物ドライバーが社員ドライバーに代わって夜間の配達を持たされるという現状を見てきました。

夜間の配達を終えて帰宅するのは、夜の9時以降になるのが当たり前ですし、宅配現場で稼働する軽貨物ドライバーのほとんどが週6で稼働しているはずです。

身体も疲れ切っているにも関わらず、日々の業務記録の作成・保存、安全管理者の選任届出など行っている余裕はないはずです。

そこで運送業出身で軽貨物ドライバーの気持ちに寄り添える当事務所が全力でサポートさせていただきます。

安全管理者の選任届出の提出代行は、22,000円で承ります。

平日1日稼働を休んで届出を行った場合は、22,000円以上の損失は確実だと思いますので、当事務所が届出の代行をしますので、余計な事務作業は忘れて稼働に集中して下さい。

是非、お気軽にお問い合わせ下さい。

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