財産的基礎とは
建設業許可を取得するということは、対外的な信用を得ることを意味します。
その信用を担保する要素の一つとして請負契約を履行するに足る財産的基礎又は金銭的信用を有しているかどうかが審査されます。
なお、一般建設業と特定建設業では要件が異なるので注意して下さい。
建設工事を着手するに当たっては、資材の購入及び労働者の確保、機械器具等の購入など、一定の準備資金が必要になります。
また、営業活動を行うに当たってもある程度の資金を確保していることが必要です。
このため、建設業の許可が必要となる規模の工事を請け負うことができるだけの財産的基礎等を有していることを許可の要件としています。
さらに、特定建設業の許可を受けようとする場合は、この財産的基礎等の要件を一般建設業よりも加重しています。
これは、特定建設業者は多くの下請負人を使用して工事を施工することが一般的であること、特に健全な経営が要請されること、また、発注者から請負代金の支払いを受けていない場合であっても下請負人には工事の目的物の引渡しの申し出がなされてから50日以内に下請代金を支払う義務が課せられていること等の理由からです。
一般建設業と特定建設業の財産的基礎等は、次のとおりです。
一般建設業
次のいずれかに該当すること。
・自己資本が500万円以上であること
自己資本とは、「資産-負債」のことで、返済を要しない資産のことだと思えば分かりやすいかと思います。
建設業許可申請において「財務諸表」という決算内容を反映した書類の提出が必要であり、そのうちの貸借対照表における純資産合計の額により判定されるため、申請する日の直前の確定した決算内容が重要です。
・500万円以上の資金調達能力を有すること
金融機関で500万円以上の預金残高証明書を発行。
申請直前に口座に入金し、要件をクリアしても問題はありませんが、残高証明書の有効期限は申請の日から遡って1ヶ月以内となっているので、申請日に合わせたスケジュール管理が求められます。
・許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること
建設業許可には5年に一度の更新がありますが、許可取得以降の決算変更届を毎年提出していれば自己資本が500万円以下でも問題なく、預金残高証明書の提出も求められません。
理由として、決算変更届が未提出だと更新は認められないので、一般建設業許可における更新においては資産要件は「実質ない」ような扱いとなっているようです。
特定建設業
次のすべてに該当すること。
・欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
繰越利益剰余金の負の額-(資本剰余金+利益準備金+その他利益剰余金)}÷資本金×100
上記計算式により算出された数字が20以下。
繰越利益剰余金に負の額がない場合は計算するまでもありません。
・流動比率が75%以上であること
流動比率とは、1年以内に現金化できる資産が、1年以内に返済すべき負債をどれだけ上回っているかを表すものです。
流動資産合計÷流動負債合計×100
上記計算式により算出された数字が75以上。
流動資産合計が流動負債合計より1円でも多ければ計算するまでもありません。
・資本金の額が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上であること
資本金の額とは、法人の場合は登記されている資本金、個人事業の場合は直前決算における期首資本金のことをいいます。
現金出資、現物出資等の内訳は問われないほか、他科目からの振り替えでも問題ないので繰越利益剰余金を資本金に組み込んで資本金2,000万円を満たす会社もあります。
一般建設業許可の項目で説明した自己資本の額が4,000万円に増えたと理解して下さい。